二か月に一回恒例の読書会。今回取り上げた本は「悪童日記」byアゴタ・クリストフでした。
- 作者: アゴタクリストフ,Agota Kristof,堀茂樹
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2001/05/01
- メディア: 文庫
- 購入: 100人 クリック: 3,630回
- この商品を含むブログ (276件) を見る
確か、社会人になったばかりの頃かな。読んだのは。
当時もかなり面白く感じたのですが、今回読み直して改めてその面白さを実感しました。
この本の面白さは、1部(悪童日記)→2部(ふたりの証拠)→3部(第三の嘘)と読み進めると、まあ毎作品驚きの展開であることに加え、1部(悪童日記)の印象が変わることなんですよね。
1部(悪童日記)はとにかく残虐な話で。それはそれで面白いのですが、3部まで読み進めると、1部(悪童日記)が本当に美しい寓話として浮かび上がる。その構成が面白いし素晴らしいと思うのです。
むかし読んだときにはそんな風には感じなかった気がするのですが、あの残虐な物語が本当に美しく浮かび上がる。自分も大人になり、子を持つようになったからか・・・。
余談ですが
自宅でこの本を読んでいるとき、あまりに熱心に私が読んでいるので、娘が「どんな話?」と聞いてきたんですね。それで印象的なエピソードを話して。ふーんと言ってたその数週間後に突然こんな絵を描きました↓
屋根裏から各部屋を監視するために天井に穴をあけたこと、おばあちゃんが上ってこないように梯子を壊したことを描いたらしいです。ちなみに、窓から見えるのは横たわったあの意地悪なおばあちゃんだそうですw
特に1部(悪童日記)の話っていうのは、実際に子供の心の琴線に触れる、というか心に残るものだったんでしょうね。そのリアルさみたいなものも見事だなと思いました。
そして、あの完結な文体ですよねえ。1部(悪童日記)→2部(ふたりの証拠)→3部(第三の嘘)と非常に完結な文体で書かれているのですが、これがすごくいい。
特にそれが活きてるのが1部(悪童日記)かな。。
書かれているのは事実のみ。いかようにも解釈できる。
例えば、あのおばあちゃんも、事実だけ見ると最初かなりひどい人なんですが、物語の最後まで読むと、そうひどい人ではないかもと思いましたよ。
ネタばれになってしまいますが、あの三部作の入れ子構造を追うにつれ、まず事実がなんなのかが揺らぐ。また事実ありきでもその解釈によってまた揺らぐ。
その揺らぐ感覚がホントに素晴らしい。
これは、作者アゴタ・クリストフ自身が戦争を経験したり、別の国に逃げたり、そこで暮らしたり。価値観、環境、いろいろなことが、ドラスティックに変わったことを経験したことが結構大きいのかな、とも思いました。
三部作全部名作。大人になって再読すると面白さ倍増。おすすめの作品です。
↓文庫版の表紙、すごく好き・・。
↓映画版も見ました。悪童日記の世界を本当に原作に忠実に描いていてとにかくびっくり。暗い目をしたふたごがイメージ通りすぎます。映像も音楽も素晴らしい。
読書会のお料理のことなどについては別エントリで。
今日はここまで。