美術部部室の中の人のブログ

アート好きな50代の女のブログです 

「奇想の系譜展」山下先生×山口画伯のトークショウに行って来ました

来年2月~東京都美術館で開催される「奇想の系譜展」のプレイベント、山下先生×山口画伯のトークショウに行って来ました。

「奇想の系譜展」は、来年開催される展覧会の中でもかなり楽しみにしている展覧会。

辻先生の著書「奇想の系譜」は、ここ何年かの若冲ブームの発端であることは間違いなく。でも「奇想の系譜」そのものをテーマとした展覧会は実はまだ実現されていなかったんですよね。

で、弟子である山下先生が「辻先生がお元気なうちに開催したい」と奔走して実現した展覧会です。

公式ウェブサイトを見ると、プライスコレクションはじめ、かなり面白そうな作品が多数出品されるようで、いまからわくわくしています。。

前回?やはり東京都美術館で開催された「若冲展」でも、企画者である山下先生自身の解説が最高だったので↓

oismgm.cocolog-nifty.com

今回も絶対に足を運ばねば!と大手町日経ホールに向かいました。

 

で、今回もかなりかなり面白かったです!

 

トークショウの代金1000円でしたが、おつりがくるぐらい面白かった!大満足。

何が面白かったって、山下先生の解説も面白かったんですが、山口画伯と意見の食いがある部分があって、それが超絶面白かった!

 

やはり山下先生の解釈を聞きながら、山口画伯側からすると描き手としてどうしても納得しかねる部分があるんですよね。すると画伯は、ややタメて(さすがに山下先生を相手に葛藤があったのだと思う)、発言されていて。画伯の、画家の目線や気持ちにシンクロしながら発する言葉にハッとするやら、納得するやら。よかったなあ・・。

 

 

山下先生が若冲の「虎図」を拡大して見せて、線画として既にかなり凄いのにさらに毛の表現まで凄い的な解説をされていたんですが、画伯は「でも、この網掛けのところ(画面右側)はラクして描いちゃってますね」と。

画伯、もう見てるところが違うんですよね。いきなり虎の部位ごとの毛の描き方の差を着目し、ここの網掛けの部分はラクしてるとおっしゃるw

画伯は、若冲の「石灯籠図屏風」の点描を例に挙げながら(「石灯籠図屏風」はリンク先を見てください)

paradjanov.biz

「専門家の中には、この点描の点は、若冲が意識して描き分けていると言う人もいますけど、むしろ点を描きながらセルフフィードバックして、描き方を変えるというのを1つの絵の中でやってる気がします。虎図の毛の描き方の違いもそういうのに通じるものがある」

要は「画に導かれるというのがある」的なことをおっしゃっていて、なるほどなあと。

 

あとは、曽我蕭白の「群仙図屏風」。

artscape.jp

山下先生は「右隻端の巻物をもっている人物は蕭白自身だと思う」との意見だったのですが、画伯は「自分が画を描いているときは、自分自身が消失したような状態で描いているので、絵の中に自分自身を描くということは感覚的にありえない」と言っていて。

両者の意見ともなるほどなあと。

山下先生のお話を聞いているとよく「これは絵の中に描かれた作者自身」みたいな解釈をされていて、先生の解釈を聞くと、思わず「なるほどなあ」と、先生の解釈に流されてしまうのですが、画伯の意見も一理あり。

 

個人的には、右端の人物は、作者と言えば作者だけど、この絵はいわば「能」みたいな構造で、夢と現(うつつ)とのブリッジみたいな役割をしている人のように思いました。

 

画伯の絵の見方ってやっぱり面白くて、ずーっとずーっと聞いていたかったな。。

特に今回は山下先生とのペアリング?で引き出されたお話が非常に面白く、また、味わい深く、心に残りました。ぜひまたお二人のトークを聞きたいです。

 

追記

トークショウの冒頭、「奇想の系譜」の初版の書影が映し出されて、画伯が「これ、辻先生ですか?」と山下先生にきいていて。山下先生は「辻先生はもっとふっくらしてるよ」と仰ってましたが、私はこの絵(国芳?)、辻先生にソックリだと思いますw

(これこそ「思わず自分自身に似たもの(自画像?)を組み込んでしまう」よい例だと思いました)

 

 

 ちなみに今もっとも流通しているちくま学芸文庫番版の表示はこんな感じ。

本のイメージを伝える意味ではちくま版の表紙がよいと思うけど、初版の表紙も捨てがたい。

トークショウがあまりに面白かったので、画伯の「ヘンな日本美術史」再読しています。画伯、月岡芳年、好きだったんだー。

 

月岡芳年。9月に練馬区立美術館でかなり大規模な展覧会が開かれていたので、見て来ました。↓

あの派手な動き!確かに画伯の好みの画家だわ。

再発見いろいろの名著です。

 ちなみに、横尾忠則氏が編集した「月岡芳年」の画集がありまして。

月岡芳年展を見た後で、この画集のことを知りました。

横尾忠則氏が月岡芳年を好きだと知って、すーーーーっごく納得!

あの色、あの構図。まさしく横尾好み。