美術部部室の中の人のブログ

アート好きな50代の女のブログです 

笠井誠一展@練馬区立美術館に行って来ました

 

笠井誠一展@練馬区立美術館

に行って来ました。

 

実はこの展覧会に行くのは二回目。

一回目は娘と行きましたが、今度はもっとゆっくり見たくて。

ファミサポデイに行って来ました。

 

やっぱりよかったー。

特に2階の展示(最近の作品)。見てて気持ちよすぎる・・。

赤、黄色、白、緑。

眼福至福。脳内バスクリン状態。

 

特に2階の展示室の最初の部屋(会場2)。

高谷史郎氏の「topograph」という作品(今年、新国立で見た「ST/LL」にも同じモチーフが登場)にも通じる、幾つかの視点を統合した静物画が面白くて。

いわゆるキュビズム的な作品なんだけど、それが割と平べったい静物画の上で展開されてて。平面構成の美しさみたいなものへのこだわりを感じるんですね。

realkyoto.jp

www.nntt.jac.go.jp

ああ、いいなあ…と思いつつ、会場3へ移動すると、さらにキュビズムも超えていきます。

会場2の作品群でキュビズムらしさを感じさせていた、静物の載る白いテーブルも巨大化して、ただひたすら構成の美しさに向かう。

筆致も洗練されていて無駄がない。

 

会場構成もとてもよくて。

 

一部、赤い壁に作品が展示されているスペースがあるのですが、作品の色とのコントラストが絶妙だったし、同じモチーフ(洋ナシやキウイ等)の作品群が並ぶスペースは、空間の醸し出すリズム感みたいなものがとても気持ちよかったです。

 

→この気持ちよさを例えるなら、モランディの静物画かな。

何年か前にステーションギャラリーで見たモランディ展も最高だったな・・・。

 ↓このベージュとかピンクの色も最高。

あと、会場3の最後に、笠井氏が実際の作品制作に用いた花器やテーブル等を展示しつつ、笠井氏の静物画の視点が作品の印象に与える影響を解説しているコーナがあるのですが、これも面白かった。

笠井氏の静物画の視点ってかなり上方向なんですよね。

テーブルをある種の「キャンバス」に見立てて、テーブル上の静物同士の距離感?を画面構成の重要な要素と考えてる。

だから、テーブルをかなり上の方向から見た絵が多い。

で、実際絵を見ると、確かにかなり上から見ているのが分かるんだけど、そこに置かれた静物を見る方向はまた微妙に違っていて、不思議な奥行感を与えている。

で、それが例えばセザンヌとかキュビズムほどには極端ではなく、絶妙なんですよね。

テーブル、静物たちの色や構成が美しくて、むしろその構成の美しさを際立たせる方向に作用してる。

 

展覧会の最後の方で、笠井氏へのインタビュー映像を流しているコーナがありました。

かなり長いインタビューだったので部分的にしか見られなかったのですが、印象的だったのが、遠近法の矛盾について。

 

「線路がずーっと遠くまで続いていると、遠近法ではその線路が画面の奥で交わるんだけど、実在の線路はそんなことない」

 

当たり前といえば当たり前なんですが、この言葉は、笠井氏の静物画の(すべてとは言わないけれども)かなり重要な部分を語っていると思います。

 

私もたぶん笠井氏の絵を見るたびに、この言葉を思い出すと思います。

 

色々ごたくを並べましたが、とにかくこんなにも見ていて気持ちのよい展覧会は久々でした。

 

しかし、練馬区立美術館の展覧会はかなり当たりが多く、近所に住んでる私にとっては本当に嬉しい限りです。

次回は12月1日(土)~「人間国宝・桂 盛仁 金工の世界-江戸彫金の技-」
その次は「ラリックエレガンス」。

工芸モノが続きます。

いずれも面白そう。

www.neribun.or.jp

笠井誠一

笠井誠一