河鍋暁斎の底力@東京ステーションギャラリーに行ってきました。
いやー、面白かった。
正直なところ河鍋暁斎って、絵が濃すぎグロ過ぎてちょっと敬遠していて、何年か前にたくさん開催された暁斎展にも全く足を運んでいなかったのですが、今回の展示に行ってみたら、ええ。すごーく良かったです。
なんというか、今回の展覧会は、ほぼ下絵だけなので、あの濃すぎる超絶技工の色味が抜けて、私にはいい塩梅だったし、何より暁斎のめちゃ上手い描線が味わえる。
例えば、お酒の席でさらさらっと描いた絵(席画)も、スケッチも、構成も含めてめっちゃ上手いし、今回の展覧会のポスターにも使われている、「猫又と狸」の下絵とかもめっちゃ上手い。
ああ、いいなあ。
最初から最後まで下絵やスケッチだけなのに、絵が上手いとここまで楽しめるのかと新鮮な感動がありました。
以下、個人的に面白かった点。
一連の作品を見ていて、え?と思ったのが、「電信柱に夕立」という作品。
電信柱がある時代の人なの?江戸のど真ん中の人だと思いこんでいたのですが、幕末から明治の頃に活躍していた人なんですね。写真も残っている。
うわ、めっちゃ最近の人だったんだw
※ちなみに、河鍋暁斎記念美術館は暁斎の子孫が運営しており、現館長の河鍋楠美さん(暁斎の曾孫)のお姿拝見したら、暁斎の面影がありますね。
電信柱の絵は、絵自体も面白くて、調べたら他にも電信柱の絵を描いてる。
これとか。
あと、なんと言っても面白かったのは、暁斎独特のやたら躍動感のある絵ですよね。
これは想像の域を超えないのですが、絵が描かれた当時、暁斎の絵を見た人は、おそらく現代人ほどにはちゃんと絵を捉えられていなかったのではないかと思うのです。
当時の人もそれなりに面白がっていたとは思いますが、現代人ほどではない気がする。
これは、以前若冲の絵を見たときにも感じたことですが、
あの超高画素の絵とか、
「ほんとにあんな動きをしていたのか?!」と思わせるようなややアクロバティックな動きとか、
たぶん、高画素の画や、アニメやCGなどの動きに慣らされた(学習された)眼を持つ私たちだからこそ面白がることができるモノが多分にあると思うのです。
暁斎の描く線に、今まで見てきたアニメやマンガ的なもので線に何かが脳内補間されて「動き」を解釈する眼の力とでもいうか。
あと、骸骨のモチーフなんかもかなり面白いですよね。骨格だけで描いても動きが見えて、セリフまで聞こえてきそう。暁斎どんだけ絵が上手いんだと思いますw
↓ちなみに、(同じ奇想の系譜的な画家である)若冲が静止画の中に動画的(アニメ的)表現をしていたって話は、以前このエントリでも書きました。
私は、若冲の鶏の画に、天才アニメータ金田伊功さんの作画に通じるものを感じるんですよ。
暁斎って、やっぱ日本のアニメの先駆を感じるな~と思ってた矢先、同じ展覧会を見た先輩からメールが来て「暁斎の絵ってアニメみたい。この人、時代が時代だったらこの人ひとりでスタジオ・ジブリができたんじゃないかな」って言ってて、激しく同意。
そう考えると、
電信柱だって、エヴァンゲリオンほか、日本のアニメに頻繁に登場していたし、
ドクロだって、タツノコプロの作品にたくさん出てきたしw
うん、暁斎、日本のアニメの先駆っぽいわー(と勝手に解釈)。
というか、先の先輩の言葉ではないですが、河鍋暁斎の「スタジオ・暁斎」のアニメ原画展だと思ってこの展覧会を見ると、脳内に河鍋暁斎的なアニメが展開されて結構面白いと思うんです。
なんだか今更ながら河鍋暁斎の面白さにやられてしまって、「ああ、出遅れた」感満載なのですが、この展覧会、かなり面白かったので、可能であれば後期も見てきたいと思います。
ちなみに、今回の暁斎展を見て、現代の美術家で暁斎に近い人は誰かなあと思って、真っ先に思いついたのは山口晃さん。絵の巧さ、皮肉と笑いのある人物の描き方、そして電信柱。めっちゃ近いものを感じました!
余談ですが、電信柱って意外と多くの美術作品に登場していて
練馬区立美術館では、こんな展覧会が開催されます。
電線絵画展。
電柱作品にエモさを感じるのは私だけではなかったんだ。。と、思わず目頭が熱くなっってしまう展覧会。絶対に行かなくては。
河鍋暁斎の底力展は、2月7日まで。コロナ渦ゆえ、どうなるか分からない状況ですので、早めに行かれることをおすすめします。
今回、河鍋暁斎展を見た後で読んだ本。
どちらもすごーく面白かったです。