美術部部室の中の人のブログ

アート好きな50代の女のブログです 

2020年のベスト展覧会 その1

2021年がスタートしました。東京では感染者が1000人を超え、東京都近郊限定ですが再度緊急事態宣言が出ました。美術館にも行きにくい状況ではありますが、今年も「美術を楽しむ」一年にしたいと思います。よろしくお願いします。

 

2020年、振り返ると緊急事態宣言からの美術館の一時閉館等、いろいろなことがありつつも、たくさんの素晴らしい展覧会に足を運ぶことができました。そして、改めて美術館で美術を楽しむことの豊かさ、ぜいたくさも実感し、「美術館をあけてくれるありがたさ」を実感した一年でした。

 

事前予約制が導入され、美術館の収益もなかなか厳しいなか、美術展を開催してくださるだけでもありがたい。。感謝感謝です。

 

さて、2020年のベスト展覧会ですが、こんな感じ。

※順不同です。

 

1.安野モヨコ展@世田谷文学館

2.桃山展@東京国立博物館

3.ピーター・ドイグ展@国立近代美術館

4.石岡瑛子展@東京都現代美術館

5.式場隆三郎展@練馬区立美術館

 

1.安野モヨコ展は、90年代を駆け抜けた女性ならみんな沁みた展覧会だと思います。90年代0年代の振り返り的なイベントも見かけるようですが、安野さんといういちマンガ家が描いた作品を展示する、安野さん個人をフィーチャーすることで、実はどんなイベント、展示よりも、濃く90年代0年代にあった「私たちの心」が表現されている気がしました。順不同と書きましたが、この展覧会は間違いなく、2020年の私の1位です。

meg0122.hatenablog.com

 

2.桃山展は、空前絶後過ぎました。ひとつひとつ豪華豪華でありつつも、文化庁の肝いりのイベントゆえ、キュレーションがしっかりして、見ごたえありました(見ごたえありすぎでへとへとになりましたが)。ここまで国宝、重文を登場させた展覧会はこれから数年ぐらいもう見られないのではないかと。

meg0122.hatenablog.com

あと、展覧会の入場料が2400円というのもかなり画期的でした。展覧会の入場料の上蓋を外してしまったと言っていた人がいたけれど、まさに。けど、個人的にはこの値段の3倍ぐらいのバリューを感じましたし、これを機に入場料も既成概念にとらわれず自由に決めてよいのではないかと思いました。多分、今までは展覧会を開催する側も~1200円という入場料を得て、後援や協賛を得ること前提で展覧会を組み立てていたと思うのですが、このコロナ渦で入場人数も絞られるし、収入的に厳しい部分もあるだろうから、もういろんな企画、価格設定があってもよいと思うのです。

また、今後コロナ渦で海外から作品を運んで派手な展覧会をやるというのも難しくなることを考えると、国内作品、各美術館のコレクションでどう面白くしていくか、盛っていくのかというのは重要な課題だと思います。今回の展覧会は、展示そのものも素晴らしかったけれど、今後の示唆をいろいろと感じさせる展覧会だったと思います。 

 

3.ピーター・ドイグ展@国立近代美術館

これもよかったなあ。ピーター・ドイグ展。会期が、コロナ自粛期間挟むという、ある種、2020年を象徴する展覧会だった気がします。会期開始ごろに、横を通りかかって、ああ見ようかどうしようかと考えて、また今度・・と思ったら翌々日ぐらいに国立系の美術館がコロナで続々閉館になってしまいました(あの時の、何ともいえぬ緊張感あふれる雰囲気は忘れられません)。そして、自粛期間があけて各美術館再開のときに、割と真っ先に足を運んだ展覧会でした。展覧会の印象とともに、コロナ渦の空気感が焼き付けられた忘れられない展覧会でした。

meg0122.hatenablog.com

展示自体、2回見ましたけど、やはり1回目が一番面白く見られた気がします。自分の頭の中にある絵画のイメージがあぶりだされるような作品。今思うと、ドイグさんの絵の面白さあるのですが、ドイグさんの絵を通じて自分の中からあぶりだされる絵画のイメージとの出会いがまた新鮮だったように思います。

 

4.石岡瑛子展@東京都現代美術館

すみません。まだレビューが書けてない展覧会ですが、ほんっとに面白い展覧会でした。というか、私は子どものころから、石岡さんの風姿花伝とがある家で育ったので(うちの両親が石岡さんの同級生なので)、なんかもう子ども時代に見たり感じたりしたものと相まって、なんとも言えない感動がありました。

想像以上にオペラ作品の衣装が展示されていて、見ごたえがあったのも◎

後日、石岡さんの自伝を読んで、再度作品を堪能したくなりました。

たぶん、会期中にもう一度見に行くと思います。

www.mot-art-museum.jp

 

5.式場隆三郎展@練馬区立美術館

これも、レビューが書けてないのですが、自分としてはかなり深く心に刻まれた展覧会でした。実は式場隆三郎氏のことを全く存じ上げなかったのですが、本業(精神科医)の傍ら、ゴッホの紹介、山下清の作品を世に出す、民藝運動等を大量の仕事をした方。

個人的にはゴッホゴッホの複製展示→山下清→初期の草間彌生の流れがめちゃ面白くて。これらの作家は当初こんなかたちで日本に入ってきたんだと。

いまのイメージが形成される前のイメージが紹介されてるのですが(当時のゴッホの複製画や山下清の紹介記事)、それらがいま自分の持つこれらの作家のイメージの共通する補助線となって、式場先生的?文脈がふわっと立ち上がるという稀有な体験をさせてもらいました。キーワードは「精神医学」。

アールブリュットとは何か、アートの王道?とは何かといろいろ考えさせられました。

www.artagenda.jp

 

あとやっぱり、精神科医とアートと言うと高橋龍太郎氏を連想しました。式場隆三郎氏が紹介した作家に初期の草間彌生さんがいたこともあるし(高橋コレクションの出発は草間彌生さんと会田誠さんの作品購入)。精神科の病理とアート。この辺りは高橋龍太郎先生に聞いてみたいところだな・・と思いつつ、深掘りするには情報が少なかったのもちょい残念(美術館に図録も無かった・・・)。

余談ですが式場氏が作った国府台病院は、島尾敏雄「死の棘」で妻ミホが入院するあの病院でして。展覧会では病院のバラ園の様子等も展示されてました。

あと個人的にツボだったのが式場氏と山下清が2人でクリームソーダを食べている写真。2人のパーソナリティ?が凄く良く出ていて凄く良い写真だと思いました。

実は、山下清氏の作品(現物)、今回の展覧会で初めて拝見しまして、なるほどこれは確かに面白いなと。切り絵が半立体的で、絵を少し動きながら見ると、2.5次元的な感じで脳内にインプットされて、2次元では味わえない面白さがあります。

(この半立体的な面白さ、ルートブリュックの作品にも通じるものがあると思いました)

 

後半6~10については、次のエントリで書きます。

 

6.河鍋暁斎展@東京ステーションギャラリー 

7.MANGA都市TOKYO展@国立新美術館

8.古典×現代 2020@国立新美術館

9.大阪万博展@T-ART HALL

10.至近距離の宇宙展@東京都写真美術館

中野正貴写真展「東京」@東京都写真美術館