11月14日に山口晃さんの特別講義@早稲田大学に行ってきました。
画伯のお話、寄り道脱線が多かったけれど
(画伯のトークショウは何度も行ってるので、ピンで話すときは寄り道脱線しがちなのは予想ついてました)
ええ話聞けた
と大満足でした!
印象的なお話メモ。
学生時代に絵が描けなくなった話。
→藝大時代に先生の講評などで、「これはすでに過去の作品で行われたことで」と説明されたりして。過去の作品を踏まえて、いま自分は何を描けばいいのか分からなくなってしまったそうです。で、自分の原点に立ち返って、子供~高校生ぐらいのときに好きだったものを描いていたら、徐々に回復していったと話していました。
当時大学3年生のぐらいのときに描いた、橋の上に3階建てぐらいの不思議な構造物が乗っている作品をスライドで紹介してくださったのですが、これが、もう今の「山口晃」の作品なんですよね。
彩色もほとんどされていない、今の画伯の作品と比べると割とラフな作品でしたが、とにかく見ていて線が気持ちいい。画伯の「好き」「楽しい」という気持ちが溢れていて、いい作品だなあと思いました。&こういう作品を学科の一年生に見せられるって素敵だなあと、ちょっと感動しました。
あとは、絵を描くときの心のあり様とか。
いろいろ興味深いことをお話していたのですが、印象に残ってるのはこの図かな↓
「好き」と「嫌い」のその間のなんとも言えず気になるもの。
この辺りにクリエーションのヒントがあるというお話が印象的でした。
なんで、気になるんだろう
と思ったら
もうちょっと掘り下げてみる。
(落合さん風に言うなら「画素数をあげる」)
確かにこれって大事だなと思いました。
なにか感性を波立たせるもの、でも言語化できていないものってすごく重要だと思います。
あとは、「構造が見えてしまう」構造への偏愛とか。
画伯は改装用のシートに覆われた東京駅の写真を見せつつ
「最高。おしっこチビりそう!!」
iMacとか、変身サイボーグとか、半分見えてる構造みたいなものがたまらなく好きとおっしゃっていましたが、あーーーなるほどと納得しまくり。
画伯の原点やわ。
あと、個人的には、エルメスで見たこの電柱が大っ好きで、スライドでも紹介してくれたのが嬉しかったな。
あと、子供の絵の話も面白かったな。
5歳ぐらいの子どもの絵がなぜいいのか。それは言葉の発達(ものや概念に、言葉によるラベリングがされる)ことにかなり関連している。
→ラベリング(既成概念の枠みたいなもの)なしで絵を描く(絵で説明する?)からすごくいい構成の絵が描ける。
とおっしゃっていたのが印象的でした。
言葉と思考の話は、今井むつみさんの本にも書かれていて(この本、すごく面白かったのでおすすめ)。また、自分の育児の経験からも納得のいくお話でした。
この話、もう少しゆっくり聞きたかったな。
最後の方で出てたデュシャンの話もかなり興味深かったですね。
コンセプチュアルアートを最初にやった人として有名だけれど、基本的に「美しいものを作る人」。「泉」も美しい、ということをおっしゃっていて。
この話もうなずきまくり。
いま上野トーハクでデュシャン展(おすすめ)をやってますけど、ホントにデュシャンの作品って美しいんです。
マルセル・デュシャンと日本美術 | 東京国立博物館・フィラデルフィア美術館交流企画特別展
大ガラスも、ドローイング作品はもちろんのこと。
グリーンボックスや、自身の作品のミニチュア作品も。今でいう愛蔵版BOXみたいなもんですよね。とにかくきれい。
なので、画伯の意見はかなりうなずけました。
それと、画伯の考え方で好きな考え方がありまして。
「軸のブレない人がいい、みたいな風潮がありますけど、実は軸はブレた方がいい」
「だって、軸がブレないって人としての幅も狭いってことじゃないですか。
軸はブレていいし、軸はいくつかあっていい」
今回の特別講義でも軸はいくつかあった方がいい。それぞれの軸でしっかり動ければよいというのを、画伯自ら、まるでバレエを踊るように解説してくださっていたのですが、学生たちに伝わったのか・・・(若干心配)。
あとで聞いた話では、画伯は「言いたいことが言えなかった」としきりに反省していたようですが、画伯の言いたいこと、意外と伝わっていたのではないかと思いました(軸の話は若干不安だけどw)。
画伯のアーティストとしての内面に迫る内容でしたし、休憩時間に画伯とお話できたし、プレゼントも渡せたしw ファンとしてはかなり満足。
声をかけてくださったY先輩には感謝感謝です。
山口さんのおすすめ本を2冊ほど。
画集だと、やはり大画面作品集かなあ。
読み物系だと、「ヘンな日本美術史」が最高です。