美術部部室の中の人のブログ

アート好きな50代の女のブログです 

2023年ベスト展覧会 その2

2023年の展覧会ベストの続きです。

 

山下清展@ SOMPO美術館

何年か前の式場隆三郎展@練馬区立美術館で見た「式場隆三郎山下清との関係」が大変に興味深く、また式場隆三郎展で見た山下清作品があまりによかったので(確か長岡の花火の作品だったと思います)、ずーっと生の山下清作品を見たかったんですよ。今回、生、しかも初期作品から大量に見られてほんとによかったです。

しかし、山下清の初期作品(8歳ぐらい?)、かなり衝撃的でした。

初期からすでに「山下清」。そしてめちゃ上手い。展覧会では時系列で山下作品が展示されているのですが、最初からめちゃ上手いのに成長とともにさらに上手くなる。まったく停滞することなくどんどん上手くなり、尋常じゃない上手さまで到達する(上手さの限界がない)。しかも、おそらく下描きなしの一発描き。想像を絶する上手さ。

回顧展とかで有名作家を時系列でみることはありますが、絵の上手さがここまで伸びていく作家は見たことがありません。しかも加速感が半端ないです。

あとちぎり絵。これ画集とかで見るのと随分印象が違うんですよ。少し立体感があるのでたとえば横方向にゆっくり移動しながら鑑賞すると色味に微妙な変化があって面白い。たぶん、シーケンスとして脳に認知されるイメージが面白いからだと思うのですが、よかったなあ。

→これは現物を見ないと分からないと思います。展覧会で現物見られて良かった~!

展覧会で、作品のすばらしさにも感嘆しつつ、彼の精神性や認知の仕組みにも興味が湧きました。なぜにすぐ放浪するのか?なぜこんなにも緻密な絵が描けるのか。

ちなみに、旅先のスケッチなどに必ず「山下本人の後ろ姿」があるのですが、これって、彼の意識の中では視点はもっと後ろってこと?描いてる自分の姿(意識)込みで自分の見ている風景が成立しているってこと?など興味関心はつきません。

式場氏と山下清との関係はこちらにも。

www.nhk.or.jp

式場氏と山下清の写真って好きなんですよねえ。なんかかわいい。式場氏はきっと 、(美術愛好家としても惹きつけられ)医師、研究者としても山下清に惹きつけられたいたのだと思います。今回の山下清展では式場氏との関係については触れられていませんでしたが、個人的にもうちょい深堀りしたいなと思いました。

 

山口晃展@アーティゾン美術館

山口画伯の展覧会、これも良かったです。

www.artizon.museum

すずしろ日記、オリンピックのポスターの経緯、画伯のパラレルワールドとしての首都を描いた「趣都」など、見ごたえ充分。

→趣都、いつ単行本化されるのかなあ。気長に待ちます!

morning.kodansha.co.jp

個人的にはこの斜めの部屋のインスタレーションにぐっときました。

写真ではどんな部屋なのか全く分からないと思いますが、全部斜めなんです。

→写真奥の女性の方向が「垂直」。

部屋に入る時からすでに平衡感覚を失うような状態でw メゾンエルメスでの個展(望郷―TOKIORE(I)MIX)で展示されていたあの「としまえん」のアトラクションそっくりの展示の変化球バージョンです。

https://www.hermes.com/jp/ja/content/maison-ginza/forum/120211/

メゾンエルメスでの展示で見たあの作品、私も大好きなので(私も子供時代にとしまえんで体験した!)、今回また体験できてとっても嬉しかったです。

⑦ 蔡国強展@国立新美

www.nact.jp

蔡国強、2015年の横浜美術館の展覧会がとてもとても良かったのですが

oismgm.cocolog-nifty.com

2015年の展示の中ではオオカミの作品(壁撞き(かべつき))がダントツに良くて、正直なところ花火、火薬系の作品の印象が薄かったんです。

でも、彼の本領発揮は「火薬、花火系」なはずで、これらの作品をしっかりとみられたのは良かったです。特に、いわきプロジェクト《満天の桜が咲く日》の様子が映像で見られたのが本当に良かった。作品が作られた背景含めて、桜色の「火薬の彫刻」が本当に美しく思わず目頭が熱くなってしまいました。

 

⑧マリークワント展@ Bunkamuraギャラリー

www.bunkamura.co.jp

この展覧会もめちゃ面白かったですね。想像していたのは「ファッションの展覧会」でしたが、実際に展覧会に行って目撃したものは「マリークワントという画期的なイノベーターの歴史」でした。


展示作品自体のデザインとしての美しさに、彼女の画期的なビジネスセンス(ブランドのライセンス、型紙ビジネス、化粧品への展開、アメリカから学んだ服の大量生産、また、大量生産可能や加工が容易な化学素材の採用などなど)のストーリーが巧みに織り込まれ、見ごたえのある展示でした。さすが、V&Aが企画した展覧会!練りに練られた内容でした。

グッズ。当時のマリークワントを扱っていたお店のミニショッパーに紅茶が入ったグッズがめちゃ素敵で購入しました。紅茶も美味しくて大満足。

 

合田佐和子展@三鷹市美術ギャラリー

mitaka-sportsandculture.or.jp

合田佐和子展は、ほんとに観終わった後、茫然としてしまいました。合田佐和子ってシュールリアリズムの作家というイメージで作品も断片的にしか知らなかったのですが、初期は天井桟敷のポスターも描いていたり、途中「前世的な記憶に呼ばれて」?エジプトに移住したり。一人の女性の生きざまを、膨大な点数の作品(しかも1点1点が重かったりする)を見ながら体験してしまったというか。最晩年の色鉛筆の作品が印象的で、これまでの作風と全然違う風だけど、色がしっかりこれまでの彼女の作品の色なんですよね。最後の最後まで表現せずには居られなかったのだろうし、限られた表現手段の中でほとばしるものが、この色というのが、「最期までアーティスト」であった彼女を感じさせて、ぐっと来ました。

 

⑩ワールドクラスルーム@森美術館

www.mori.art.museum

これもよかったです!アートを国語算数理科社会の科目別に展示するというコンセプトだけで優勝という感じなのですがw、それぞれ「なぜその科目にカテゴライズ」したかの説明や、作品ひとつひとつの選び方がとても丁寧で、私自身とても楽しかったし、ほかの人と一緒に来て語り合いたいな~と思わせるキュレーションがさすが森美術館だと思いました。

→かなり面白かったので、娘と一緒に行けばよかったと思いました。

 

2023年は子どもの不登校などもあり、心が不安な時期もありましたが、展覧会に足を運びリフレッシュする時間は、自分が自分自身に戻れる貴重な時間でした。自分としては逃げ出すような気持ちで展覧会に行ってしましたがw ちゃんと自分に効いている。アートはやはりいいですね。

2024年は(やるべきことをやったら)、アート含め思い切り自由な時間を楽しみたいと思います。