南薫造展@東京ステーションギャラリーに行ってきました。
東京ステーションギャラリーって、私にとって知らない作家の展覧会が多くて、最初ハードルが高いのですが、行ってみると満足度の高い展覧会が多いんですよね。
ほぼ毎回新鮮な鑑賞体験をさせてくれる稀有な美術館です。なので、この美術館で開催される展覧会は、知らない作家の展覧会でも、できるだけ足を運ぶことにしています。
さて、今回の展覧会は、南薫造。
今回も(失礼ながら)知らない作家…でしたが、ええ、とてもよかったです◎
南氏の水彩画はかなり彩度が低くてパッと見での華やかさはないのですが、その彩度の低さが独特の湿気を感じさせる描き方なんですよね。じっと見ていると、湿度越し?の色の美しさを感じられる。
「ああこの空気感、気持ちいい」
と思わせる。
絶妙な色使いがたまらない。
これは日本人ならではの湿度と色彩の感覚かもしれません。
肖像画も美しく優しくとてもいいし、風景画もいいなあとを見進めていくと(ここまでの作品で、既にかなり気持ちよくなってしまって、大満足だったのですが)、版画のコーナが。
自分としては、この版画がちょっとびっくりな作品でした。
え?何この版画、すごい。
版画としては、輪郭線も刷りも色味も薄くて、ちょっと粗な印象があるのですが、見ていると、かなり鮮明にこの場面が見えてくるような気がしたのです。例えば、鍬?を持っている人物の影を見ると、この場所の日差しの強さが感じられるし、手前側の畑や人物あたりが写真のように鮮明に頭の中に浮かぶ。
全体的には粗な画のはずなのに…頭の中に浮かぶイメージがやたら鮮明なのです。
見たこともないのに。
この不思議体験を一番顕著にさせてもらえるのが、この版画シリーズだと思うのですが、この版画が展示してあるフロアの作品でも同じような体験が。
キャベツ畑…。ええ、キャベツ畑の絵なんですよw
割と太めの筆で、どしどしっと描いたキャベツ畑。割と濃いめの色の作品で、最初見たときは、あんまりいいと思わなかったんですが、帰宅して2-3日した頃からか、このキャベツ畑の印象がずっと頭の中に残らないことに気が付きました。
「ジワジワ来る」ってこういうこと??
この絵も地味な題材だし、太めの筆で粗っぽく?描かれているのに、このキャベツ畑の風景がやたら鮮明に頭の中に浮かぶのです。
どうでもいいけど、画面右の子どもと比べると、このキャベツがいかに大きいか分かるし、その巨大キャベツの外側の葉っぱの青々とした感じもやたら鮮明に見えてきます。
もちろん、この作品のほかにも作品多数。かなり地味めの色の作品が多いのですが、見てるとその後ろにある(自分の過去の記憶にもある?)、鮮やかな日本の風景がまるで写真のように頭に浮かぶという。。なんともいえない不思議で新鮮な鑑賞体験をさせてもらいました。よかったなあ。
で、改めてこの展覧会のキャッチコピーを見ると
「ニッポンの印象派」
ああ、まさしく!
これは日本人による日本人のための?印象派だなあと。
こんな作家、滅多にいません。
展覧会は2021/4/11迄。ぜひぜひ。
***
とここまで書いてふと思ったこと。
いわゆる欧州の印象派作品のこと。
私も印象派の作品は大好きなのですが、南氏の作品の鑑賞体験を経て思ったのは、欧州の人たちが「印象派」の作品で見えているものと、私たち日本人が「印象派」の作品で見えているものとは、けっこうな解離があるんじゃないかな、ってこと。
作品の舞台になった、様々な風景を自身の経験として持っている人たちと、そうでない人(私)とでは、あの印象派の抽象化された画素の中で見えてるものが違う…
当たり前といえば当たり前ですが、そんなことを改めて感じました。
***
さて、ステーションギャラリーでよき作品と出会ったあとは、ティータイム。例によってトラヤトウキョウ@ステーションホテルでお茶をしてきました。
大好きなフィリップワイズベッカーさんの絵が見える席で。
とらや謹製じょうよ饅頭とコーヒ。とっても美味しかった。
私が行った16時~17時ぐらい。いまは席数を少なくしているので、8割がた席が埋まっている感じでした。行かれるのであれば予約するのが安全かも。
おすすめです。