先日「マーク・マンダース 保管と展示」を見ていて、「マーク・マンダースの不在」って一体何だったのかを書いておくべきだなーと思ったので、メモ的に書いておきます。
2-3年前に、東京都現代美術館のコレクション展で初めてマークマンダースの作品《椅子の上の乾いた像》を見たときは、何が面白いのかさっぱり分からなかったですw
が、今年4月に「マーク・マンダースの不在」展に行ったら、冒頭からいきなり一気に世界観が見えてきて、ああなるほどと。
当然ながら、以前見た《椅子の上の乾いた像》も、他の作品からの流れで見ると、「建物としての自画像(マークマンダース)を構成する物品」という文脈が見えまして。
展覧会全体もすごく楽しめました。
マークマンダースの作品は、現代美術の作品なのに、遺跡のようでもあり、また制作途中のようにも見えます。
特に人物像は古典作品からの引用にも見えるし…どの作品も時間を超えてるように見えます(マークマンダース曰く「自画像はすべて時間がすべて凍結しています」とのこと)。
展覧会で「マーク・マンダースの自画像」としての巨大な建築物(どこか遠くにある架空の建築物)に置かれている、という設定のインテリアや彫刻作品を鑑賞しつつ、自分の脳内でその建築物の空間を補完する。
そして浮かび上がるマーク・マンダース…。
何を言っているのは分からないかもしれませんがw、敢えて似た状況を説明するのならばアガサクリスティの「そして誰もいなくなった」でしょうか。
あの作品も、登場人物が巨大な邸の中を歩きながら、ほんとにいるかいないかよくわからない「オーエン夫妻」に想像を巡らせ、「オーエン夫妻」らしきものが浮かび上がります。
そんな状況をイメージすると少し分かるかな…
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あと、本展で面白かったのが、「三羽の死んだ鳥と墜落する辞書のある小さな部屋」という作品。写真撮影不可だったので、ここに写真を掲載できないのが残念なのですが、白いキャンバス地が敷かれたふかふかの床の小部屋が用意され、その部屋に靴を脱いで上がるのです。最初、作品タイトルを見ずに上がったのですが、後から作品タイトルを見て「えええ?!」と。最初とは床の印象がまるで違うw
念のため、会場のスタッフに「ほんとに死んだ鳥が床のどこかにあるのですか」と尋ねたところ、「作家が言うには「ある」」とのこと…。
当たり前ですが、どこにあるのかは教えてもらえず。
ここでも「不在」。
最後まで素晴らしかったです。
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設定込みで鑑賞するという、ちょっと高度な脳内ゲーム的?な展覧会でしたが、意外なほど鑑賞空間は心地よく、私はすっかりマークマンダースのファンになってしまいました。
今思うと、本展の前に開催された金沢21世紀美術館での、ミヒャエルボンマレスとの2人展も行っておけばよかったと激しく後悔。
ああでも、次回(いつになるんだかわからないけど)、マークマンダースの展覧会が開催されたら必ず行くんだと心に決めました。
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