美術部部室の中の人のブログ

アート好きな50代の女のブログです 

杉本博司 Past Presence

コロナデイズですが、緊急事態宣言前に駆け込みで見てきた、展覧会の記録です。

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ほんとギリギリで見られた感のある、ギャラリー小柳の杉本博司 Past Presence。

作品数は少なかったのですが、杉本氏の新境地が垣間見れて、また杉本さんらしいインスタレーションを含む展示でファンとしてはたまらない展覧会でした。

※ギャラリー小柳は現在休廊中。残念ながら本展は休廊中に終了してしまうと思います。ああ、残念。

www.gallerykoyanagi.com

 

杉本氏の建築シリーズ(近代の名建築を無限の2倍焦点で撮影したぼやーとしたフォルムから、フォルム自体の再解釈をするというもの)からの流れなんだろうけど、建築とは表現されてるものはまるで違うと思いました。

杉本さんが撮るとジャコメッティが「死者」になるという。

メディアの変換で被写体の意味とか雰囲気がこんなにも違ってくるとは。

驚きました。

この死者の感じ。。私は、ボルタンスキーの作品を連想したんですが、他の人はどう感じたのかな。

 

あと、この作品、展示の仕方も凝っていて、小柳ビルのエレベータがギャラリのあるフロアで止まり扉が開くと、この作品がどーんと見える仕組み。かっこよかったなあ。

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杉本さんらしい、しつらえもありました。ドックフード。しかも老犬向け。


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これもよかったなあ。
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あと、この仏像のインスタレーションもよかった。

最初よくわからなかったのですが、杉本さん的なジャコメッティ作品のインスタレーションなんですね。シルエットに注目。
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実は一番驚いたのがこのマグリットの作品(杉本さんが絵を撮るって初めてではないかしら?)。
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油絵で描かれた空の光が、写真というメディアを通すことで、絵で描かれていなかった光まで私たちの目に届けてくれるというか。写真を通した、絵に描かれた光の変換の鮮烈さ。。やはり杉本さんすごいなー。
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杉本さんといえば、もう絶対に行きたいと思っていた、京セラ美術館での個展も5/6以降に延期になってしまいましたね。

kyotocity-kyocera.museum

 

今の状況を踏まえると、5/6以降の美術館の再開も難しいかもしれません。というか、国立公立の美術館が再開する日っていつか来るのかな、って思っています。

 

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今回、コロナによる緊急事態宣言後に、このブログの記事を書きながら、恵比寿写真美術館で見た杉本さんの「ロスト・ヒューマン」展のことを思わず思い出してしまいました。あの展覧会は、人類と文化の終焉後の世界がテーマでしたけど、あの展覧会で設定されていたような事態が起こってしまった今、杉本さんはこの事態をどうとらえているのかなと。

 

「むかし、美術館というところがあって、素晴らしい美術品を生で見られたんだよ」

 

近い将来こんな風に誰かに語る日が来るのかもしれないなと、「ロスト・ヒューマン」展のことを反芻しながら考えました。

 

 杉本さんは写真だけでなく、文も達人。苔のむすまでは随分前に読んだけど、休暇中にもう一度読んでみようかな。

苔のむすまで

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